2016年11月8日火曜日

月の子

 体調が良くない中で読んだ漫画の感想でも。

 しばらくぶりに清水玲子先生の「月の子 MOON CHILD」を読み返しました。清水玲子のマンガは、今連載している「秘密 season0」はまだ購入していないのですが、それ以外は揃えています。
 この「月の子」は「竜の眠る星」の後の二つ目の連載……という位置づけで良いのかな。「輝夜姫」や「秘密」というヒット作はあるものの、清水玲子の代表作といえばこれかなぁ、という印象が私にはあります。

 この作品は、「人魚姫」をモチーフにチェルノブイリ原発事故を絡めた大がかりなファンタジー作品ですが、読んでいるときはファンタジー漫画というより恋愛漫画と感じることが多いかもしれない。どろどろした感じが薄いちょっと空想的な恋愛で、「作者は本当に恋したことあるのかな?」などと思ってしまいそうになりますが、なんというか純粋な恋愛が楽しめます。
(そんな作者も2005年に出産しているんですよね。知ったときはなぜかちょっとショックでした。そしてそれ以降もシビアな作品を描き続けている)

 ただ、私はこの作品の結末の付け方がちょっと気に入っていませんでした。「人魚姫」をモチーフにしているから「奇跡」を結末に持ってくるのは分かるのですが、ちょっとご都合主義的ではないか、と。個人的には、最後まで綺麗に纏まっている「22XX」なんかの方が好きです。

 と、思っていたのですが、今回読み返して、この結末はこの結末で良いんじゃないか、と思い直しました。特に、これを「ご都合主義的」と言うのはちょっと違うんじゃないかと。奇跡が起きて都合の良い未来になったというのでなく、悲劇的な未来もありえた中で、一つ上手くいった未来がマンガ中では描かれた……という多世界解釈的な感覚で読むのが良いのかな、と思いました。

 清水先生は、世界や自然のシビアさを人為的に解釈してしまったりせず、そのまま受け入れ描いているような印象があります。「月の子」も、改めて見直すと自然な展開、結末と言っていいかもしれない。昔の私は素直に読めていなかったのかなぁ。

 なお、「秘密」も良い作品だと思いますが、人間ばかり描いている印象で、世界や自然を描いていると感じる部分が少ないのがちょっと不満。「ジャック&エレナシリーズ」あたりの方が読み返しやすいです。

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