2016年4月26日火曜日

萩尾望都SF原画展

 萩尾望都SF原画展に行ってきました。

 私は大抵の萩尾作品は読んでいるつもりでいたのですが、初期の作品は結構読んでいなかったことに気付かされました。初期のコメディタッチのものは多少読まなくても許されるとしても、萩尾SFは好きなので一通り抑えておきたいと思っていたのに、です。もっとちゃんと読まなくては。
 あと、今回原画を見て思ったのですが、結構、初期のタッチは竹宮惠子と似ているんですね。初期の萩尾と初期の竹宮はそう似てないけれど、初期の萩尾SFと中期の竹宮のSF・ファンタジー作品のタッチは結構似ている気がしました。萩尾先生は、「スター・レッド」あたりからキャラの輪郭(顎とかおでこあたり?)に特徴が現れるようになり、竹宮先生の描くキャラと見間違うことはなくなるのですが、初期の萩尾の絵は非常に完成されているものの、中期以降と比べると意外と個性が薄いのかな、と。

 閑話休題。
 今回扱ったSF作品だと、「バルバラ異界」をもっとたくさん扱って欲しかった。扱っていないわけじゃないけれど、ちょっと比重が少なめのような気が。「スター・レッド」「マージナル」「バルバラ異界」が萩尾SFの三本柱と思っているのですが、私はその中でも「バルバラ異界」の完成度に惹かれます。

 「スター・レッド」はなんというか、感覚的なSFだと思います。物語はしっかり作っているし完成度は高いものの、若書きらしい味がどこかに残っている。そこが面白いのだけど、SFとしては欠点とも映る。これが「銀の三角」の頃になると、この作品も萩尾の感覚が凄くでているのだけど、理性が強くなっているのが感じられる。
 「マージナル」は逆に、萩尾さんの理性的な部分が強く出過ぎてしまった作品かな、と。面白いけれど、萩尾さんの感性に惚れていた人からすればちょっと物足りないかもしれない。

 「バルバラ異界」は萩尾先生の長編SF作品の中で最も理性的に作られたものでしょう。転機は、やはり、直前まで連載していた「残酷な神が支配する」。理性的、といっていいかは分からないけど、感性で物語を作ってしまうことをせず、力技で物語を描き切った。その力強さがこの「バルバラ異界」でも発揮されていると思う。
 そのおかげで、この作品はSFらしいSFに仕上がった。結末が見えぬまま描きだしたということだし、全て理性的に物語を描いたわけではないだろうけれど、感覚的じゃない、SFファンも納得の一品に仕上がっているという意味ではこの作品が一番だという気がします。



 でも、この原画展を見ると、萩尾さんにとってはそういう位置づけではないのかな? 初期の、美麗流麗な萩尾さんの頭の中を写し取ったような作品群があってこそ近作の萩尾作品があるというのはもちろんだけど、私としては、「バルバラ異界」を萩尾SFの到達点として推したいのだけど。

 もちろん、原画展の開催を考えた場合、「昔、萩尾さんはどうやって描いていたんだろう?」という興味で来る人が多いだろうし、やはりというか、古い生原稿には人を引き付ける魅力がある。私も、初期作品の原稿をぽわ~っ、熱に浮かされたようにして眺めてしまった。でも、今の萩尾さんがどう描いているかだって知りたい。
 そして、これから何を描くのだろう? どんなSFを描いてくれるのか。それも見せて欲しかった。


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